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長期優良住宅について

当ページでは、長期優良住宅の認定条件やメリット・デメリットなどを解説している。

長期優良住宅とは、法令に基づいた条件を満たすことで、長期にわたり優良な状態を維持できることが認定された住宅を言う。

世代を超えて住み続けられる耐久性、各種の優遇税制、地震保険料や住宅ローン金利の引き下げなどが主なメリットだが、一般住宅に比べて初期コストが割高になる可能性が高い点、申請した計画に基づいたメンテナンス・補修が必要となる点など、いくつかのデメリットもある。

長期優良住宅に関心のある方は、メリット・デメリットを踏まえて慎重に検討されたい。

長期優良住宅とは?

長期優良住宅とは、長く良好な状態で住み続けられる措置を講じた性能の高い住宅のことを言う。

ただし、単に業者が「高性能なので長く住み続けられますよ」と単に業者が説明した住宅を長期優良住宅と言うのではない。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の用件を満たし、その認定を受けた住宅を長期優良住宅と言う。

以下、法律で定められた長期優良住宅の認定基準を順次見てみよう。

居住環境

長期優良住宅は、街の景観や計画などを無視して勝手に建てることはできない。いかに優良な住宅であっても、地域の景観計画や景観協定、建築協定、地区計画、その他の街並みに関する条例等に調和させて建てなければ、長期優良住宅とは認められない。たとえ住宅そのものがしっかりしていても、地域とのバランスが重要ということだ。

住戸面積

良好な住宅水準を維持するために必要な「住戸面積」を確保する必要もある。具体的には、戸建ての場合が75平米以上、共同住宅の場合が55平米以上だ。これらの平米数を満たした上で、少なくとも1つの階(階段部分を除く)は40平米以上とする必要もある。

省エネルギー性

断熱性・気密性を高めた仕様とすることで、冷暖房効率の向上につながる省エネルギー性の用件も満たさなければならない。具体的には、断熱等性能等級を「5」で、かつ一次エネルギー消費量等級を「6」とする必要がある。

外からの暖気・冷気の影響を抑えられるかどうかという視点はもちろんだが、特に冷暖房効率を高めるかどうかという省エネルギー性の視点が重視される。

劣化対策

建物の土台や柱、壁などの構造躯体を中心に、劣化を軽減させるための対策を十分に講じているかどうか、という点も基準となる。劣化対策等級(構造躯体等)で言えば、等級「3」に該当するレベルが必要だ。

住宅の構造により劣化対策の評価方法は異なるが、たとえばRC住宅の場合、セメントの種類や水セメント比、雨水の浸透対策、部材の設計・配筋などが評価対象となる。

耐震性

数百年に一度の割合で起こる極めてまれな地震において、仮に住宅が損傷したとしても、改修により住宅を継続利用できる程度の耐震性を持つことが求められる。

住宅品質確保促進法の免震建築物に該当すること、もしくは、住宅の構造により耐震等級「1」以上であることが必要である。

近い将来の大地震が予測されている中、長期優良住宅であるか否かに関わらず、昨今は耐震等級「3」(最高等級)の住宅が増えてきたようだ。

維持管理・更新の容易性

給水管や排水管、ガス管など、比較的耐用年数の短い設備において、点検・清掃・補修などを容易に行えるよう対策が講じられているかどうか、という点も大事な基準だ。新築戸建て住宅の場合、維持管理対策等級(専用配管)「3」のレベルが求められる。

維持保全計画

優良な状態を長く維持するため、定期点検や補修に関する計画も立てておく必要がある。具体的には、住宅の構造耐力における主要部分、給水・排水のための設備、雨水の浸入を防止する部分に関し、具体的な維持保全計画を打ち立てなければならない。

災害配慮

災害が発生するリスクのある場所に長期優良住宅を建てる場合、その場所のリスクの大きさに応じ、所轄の行政庁が定めた措置を講じる必要がある。災害発生リスクの大きさは場所によって異なるため、具体的な内容は対象地域を管轄する行政庁に確認されたい。

長期優良住宅のメリット

長期優良住宅のメリットは、何よりも、数世代にわたり安全・快適に暮らせる家が実現するという点だ。

増税や物価高が懸念される将来を見据え、わが子の将来の住居負担を軽減させるために長期優良住宅を選択する世帯も少なくない。

また、長期優良住宅を建てた方には優遇税制が適用される点も見逃せないだろう。

時期により優遇内容は異なるが、住宅ローン減税や登録免許税、固定資産税、不動産取得税など、複数の税制において長期優良住宅には優遇制度が適用されることがある。

ほかにも、住宅ローンの金利が引き下げられる点、地震保険料が割引となる点、地域型住宅グリーン化事業の補助金を支給される点などが、長期優良住宅を建てるメリットとなるだろう。

長期優良住宅のデメリット

メリットの多い長期優良住宅だが、デメリットがないわけではない。以下3つのデメリットを踏まえ、長期優良住宅を選択すべきかどうか十分に検討してみたいところだ。

1つめが、長期優良住宅の認定を取得するための時間やコストがかかるということである。

長期優良住宅の認定を目指すためには、着工前の申請手続きが必要だ。所定の手順に従って申請を行うのだが、これが意外に時間のかかる工程。本業で多忙な方は要注意である。また、申請には一定の手数料がかかることも理解されておきたい。

2つめが、建築費用が一般住宅よりも高くなることである。

もちろん、一概に一般住宅より高いとは断言できないが、省エネルギー性や耐震性、劣化対策など、上で説明した条件を全て満たすためには、一般住宅よりコストが高くなっても何ら不思議ではない。

3つめが、維持保全計画に従った定期点検やメンテナンスを必ず行わなければならない点だ。もし維持保全計画に基づく対策を行った場合、長期優良住宅認定の取り消しや税金変換などを求められることがある。

何十年にわたり住み続ける予定なら長期優良住宅も選択肢に

当ページでは、長期優良住宅を強く推奨しているものではない。一般住宅に比べてコスト高になる可能性がある点も踏まえ、十分に検討してほしい。

ただし、新築住宅を建てるにあたり、終の棲家として30年、40年と住み続けるイメージをお持ちの方、あるいは、お子様の代にも長く住み続けてほしいと考えている方は、前向きに長期優良住宅を検討してみてはいかがだろうか。

初期コストや維持費は高めになるものの、何十年にもわたり住み続ける前提であれば、必ずしも長期優良住宅のほうがコスト高になるとは限らない。長い目で判断されたい。